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2009/11/15

ドイツの国際影絵フェスティバルに参加して

 

このフェスティバルは、ドイツの南西部バーデンビュルテンベルク州の中の「シュベービッシュ・グミュント」で行われました。世界でも数少ない影絵劇の国際フェスティバルは、街ぐるみで協力しあいスタッフの方々も親切でとても素晴らしいものでした。

さて、今回初めてヨーロッパに足を踏み入れた私には、この街の全てが違って見えました。
空気、建物、木や川。色あいが違う!と感動したのが最初の印象です。元々この街が、木組みの家がたくさん残るドイツの古都ということだったのですが。
屋根瓦が茶を基調とした木組みの家以外にも、石造りの教会が私の目を引きました。目の前にゴシック様式の教会!そのレリーフは天にも登る高さにあるのです。その美しさに身震いする程でした。日本では考えられないスケールです。
会場となった文化センターも立派でした。建物の壁を大きく縦に貫く窓が印象的な美しい建物です。

本題に戻りますが、私たちはドイツで10月13,14日の2日間で公演を3回、ワークショップを2回行いました。
11日に日本を発ち、7時間の時差を超え到着したのはドイツの夜中でした。移動にまる1日かかるのです、本当にドイツは遠いです。(モスクワ経由のせいでも有りましたが・・。)

公演は大成功でした。言い過ぎかもしれませんが私にとっては夢のような時間でした。
それは手影絵の動物を出す度に、コミカルな動きをする度に笑いと拍手。
「演技者にとってこれ以上嬉しいことはありません!」と断言できるぐらい絶え間ない拍手だったのです。私は緊張と嬉しさとで本当に泣きそうでした。

この手影絵公演の構成は50分。
最初に2分程の手影絵ショー(動物の大行進)。次に日本の伝統的な手影絵の紹介。ここでは現地の方に通訳をお願いし、障子戸の絵で影絵遊びを紹介しました。その後、ペンギンの物語「ペン太&ペン子」。最後にアンコール用として短いショー(ゴリララブストーリー)です。

注目すべきは「ペン太&ペン子」の物語です。
この作品はかかし座で初の試みとなる30分の手影絵ショーです。手影絵は作る動物とスクリーンの高さにもよりますが、画面に頭や体が出ないようにかなり無理な体勢をしなくてはならないのです。その為、長時間手影絵をし続けるのは難しいと私たちは考えていました。
しかし、今回ドイツ公演に向けての一つの大きな課題「荷物を少なく!!」(←大真面目です。)を実行するため、普段行っている影絵人形を使った芝居を抜きにして、手影絵で勝負する必要がありました。
また、手影絵だけの表現で一つのストーリーを構成する事は私たちが共通で持つ、大きな夢でもあったのです。

そして、手影絵だけの公演と決まった時からの大問題は、50分間言葉が通じないのにどうやってお客さんを飽きさせずに見せる事が出来るか・・・? でした。
今までもいくつかの短編ショーのレパートリーはありましたが、時間が短い分インパクトを出すために、いかに動物の数を出すかということに主眼が置かれていた様に思います。
今後手影絵公演をレパートリーにしてゆく上で、このドイツ公演で大きなチャレンジをする事になったのです。そのためには、ただ動物をたくさん出すパターンだけではいけない!という予想がありました。
この事から私たちはある決断をしました。物語を作れば個々の動物表現も広がり、何よりこれからのかかし座に繋がると考えたのです。

話し合いの結果、「世界中のどんな国の人々でも恋愛をする!」という決定的な論理?の下にペンギンの恋物語に決まりました。
「南極に住む夢見がちなペンギンのペン太は彼女を置いて外の世界に旅にでる。」たったこれだけの大筋は決まったものの、試行錯誤の日々が始まりました。セリフ無し、しかも動物の動きのみで30分の話を作ることは予想以上に大変だったからです。
動物の種類は勿論、ペンギンと他の動物との関係性が繰り返しにならないように、そして如何に手影絵の面白さを出すか。見飽きず見てもらえるか工夫を出し合いました。
また、背景の絵もどこまで具象を入れるか問題になりました。
黒い影の動物は、見る人の目によって平面が立体に見えます。実は周りに具体的なものがない背景の方が影から立体的を想像し易いのです。
しかし、今回はシーンごとの違いを明白にするためスクリーンの色の変化だけでなく、具体的な絵を取り入れることに挑戦したのでした。
それによって表現の幅は確実に広がったと思います。手影絵で役者の技術を直接使う部分、背景の絵の利用による効果を期待する部分、の相乗効果が期待出来ます。
手影絵も今回新しいものがたくさん考案されたし、クライマックスのダンスシーンの演技の練習のため、皆でダンスの練習も試みました。まさか手影絵をするのにピップホップの練習をするとは夢にも思わなかったですけれど(笑)。
みんなの協力のもと作られたこの作品は、ドイツで客席の歓声に後押しされ、メンバーのテンションは最高潮でした。結果、シーンごとに拍手が鳴りやまなかったのです。
先輩のしなやかな手影絵技が冴えていたし、頭(頭髪)を使った影が笑いをとり、茶目っ気たっぷりな女泣き(?)のシーンも好評でした。もちろんペンギンの動きは笑いを誘い、とりわけペン太がお尻をふる場面も大受け! この動きは可愛いくて、私も大好きです。

そういえば、笑いどころはいくつもあったけれど「えっ!?こんなところが?」と私たちが予想もしない部分での反応もありました。どうやらドイツ人の感覚は日本人とは少し違うみたいです。
共通に感じたことは、子供達の反応です。開演前のざわめきもそうですし、純粋で素直な笑い声はどこもかわらないと実感しました。

今回、ドイツ公演メンバーになり本当によい経験となりました。手影絵作品を作った事、ドイツの方々と交流できた事、何より手影絵の未来の可能性を感じました。

この作品を皆さんにお見せする日がくる事を楽しみにしています。
皆さん是非見に来て下さいね!!

上演部 谷口裕美