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今月、北海道平取町(ひらとりちょう)二風谷(にぶだに)の自宅前にミニFM局FMビバウシを開局した。放送は月に一度、昼間の一時間だけ。二風谷周辺でしか聞けない小さなラジオ局だが、国内初のアイヌ語放送局だ。 「言葉は足を持っている」。民族言語の命脈を信じるひと言が、第一声となった。 アイヌ民族初の国会議員として、アイヌ新法の成立にかかわった「議士」の印象が強い。だが、三十代のころから、長老らへのアイヌ語の聞き取りを始め、昔話や辞典も出版した。先月には、総合研究大学院大学(神奈川県)から博士号を授与された。 先祖たちは差別の下で生きてきた。若き日には「アイヌ語なんて煮てくえるのか。何の役にも立たん」と悪態をついた。しかし、日本語を話さない祖母の死に接し、「民族の言葉が、ポロンと消える」と寂しさがこみ上げた。 以来アイヌ文化研究にのめり込み、ラジオ局を開設する夢を抱いてきた。「言葉は民族の魂。自らの言葉によるメディアを持つ意義は大きい」と、今は胸を張る。 「ビバウシ」はアイヌ語の二風谷の古い地名で、「貝のあるところ」と言う意味。送信機などに約三十万円の私費を投じ、スタッフの七人はいずれもボランティアだ。 開局した八日には、「アイヌ語ひとくち会話教室」「早口言葉グランプリ」などを日本語を織り交ぜて放送した。「放送で流れたアイヌの言葉が伝われば、民族意識の目覚めにつながる」。確信に満ちた表情で語った。 |