【 「黒」に魅かれて(「ロッテ・ライニガーの世界」を観て)】
「企画営業部」うえだよね
去る2005年12月15日(木)東京都写真美術館にて、「ロッテ・ライニガーの世界」を観てきました。ロッテ・ライニガーというのはドイツの女性影絵アニメーション作家です。私の行ったその日には、99年に映像の修復とオリジナルの楽譜から音楽の録音が行われた「アクメッド王子の冒険」と、短編「パパゲーノ」が上映されました。
「パパゲーノ」は皆さんよくご存知のあの「魔笛」です。「アクメッド王子の冒険」は私たちがちょうど上演中の「アラジンと魔法のランプ」に出てくるお姫様のお兄さんが主人公でした。ちょっと情けない感じでしたがアラジンも、またうちのとは全く違いますがアフリーキーらしき者も出てきました。いずれも音楽に合わせ、影絵でストーリーが描かれて行きます。
うっすらと色味は感じられますが、メインは「黒」。人物や、動物、木々に至るまで、「黒」で表現される部分はデザインがとても細やかで洗練されています。バックライトの上に黒い紙を切ったものを置いて動かして撮影したというのですが、その人間の手に操られた動きが、時にノスタルジックに、時にコミカルに映し出されます。
今回、ロッテ・ライニガーのシンプルな世界を観たことによって、私は特に「黒」の強さ、「黒」の美しさを再認識しました。それでも、長編作品はさすがにやや単調に感じましたので、個人的には後半若干の睡魔が襲って来たことは否めません。そのためか「パパゲーノ」の方がとても印象的なのですが、オーケストラの音の中、「黒」を観ている自分が、見えない表情を、聞こえない台詞を想像して、自分の中でより豊かな作品になっていくのを感じました。
私たちかかし座の影絵も映像から始まりました。今は舞台を中心にやっていますから、表現も多彩になり、作りも複雑になっています。その善し悪しはその作品全体のできとして考えるにしても、複雑になるが故に説明しすぎてはいないか、観る人の心に訴えられているか。初心にも立ち返って「黒」というものをもう一度見つめ直したいと思うそんな時間でした。
|