【充実のソウル公演】
上演班 班責 飯田周一

 劇団としては初の本格的な海外公演となるソウル公演にむけて、俳優側、及び制作側ともに4月より準備してまいりました。制作側は、会場の下見、舞台大道具の輸送手配、現地スタッフとの打合せに奔走し、俳優側は、ハングルの講師を稽古に招聘し、ハングルの習得、およびハングル字幕の影絵の絵への取り込み等で大忙し。先にソウルへ向かっているはずの大道具がはたして会場に間に合うのか、わたしたちのハングルが本当に韓国の方々に通じるのか、それぞれがそういったちょっとした不安、そして初めての海外公演への期待に胸を膨らませながら。

 ソウル入り2日目。会場入り、仕込とゲネプロ予定日です。会場は、ドンソン教会。若干大変な会場でしたが、現地のスタッフさんたちが尽力してくださったおかげで、かなり良い条件まで持っていくことができました。この日から、アシテジが派遣してくれた通訳の女性2名も合流です。

 午前中にはほぼ装置の組上げが完了し、午後から照明のシュート、PAチェックと、予定よりスムーズにスケジュールは進行しました。

 3、4日目。ついに本番です。それぞれ午後2時と5時開演の2ステージ。初日は5時のステージ後に、2日目は午前中にワークショップを実施しました。

 そして、ファーストステージ。控え室は案外といつも通りでした。皆の心配は、自分たちのハングルがどれだけ通じるか、それくらいでしたかね。それぞれの配役に、約2割から3割程度のハングルセリフがあります。記憶はしているが、それがしっかり『言葉』として機能するのかどうか。 

 まず、はじめの手影絵パフォーマンスで、熱狂的な拍手に迎えられました。その後の手影絵パフォーマンス、『動物たちの大行進』も、大変な歓声でBGMを聞き逃してしまうほどでした。30種類ほど登場する、手の影で作り出される動物たちを楽しんでくれたようです。そして本編の『長靴をはいたねこ』へ。

 こちらも、手影絵パフォーマンスに負けないほどの反応がありました。とにかく韓国の人々は情熱的。歌では強烈な手拍子でわたしたちを鼓舞してくれます。つたないハングルには耳を傾けて、楽しんでいたかな(アクセントのおかしさを笑っていた風にも感じましたが、どちらにせよ楽しんでもらえたのに変わりはないと思います!)。こうして、1ステージ目は無事、終演したのでした。 

 さて、終演後、休むまもなくワークショップです。20数名残ってくださったお客さんに、影絵劇の簡単な説明と手影絵をいくつか教え、童謡『ウサギとカメ』をチャレンジしてもらうという企画でした。
 こうして、無事、初日は終了しました。その夜はとりあえず初日開けの打ち上げ。といっても、明日はもう楽日なんですけどね。

 そして4日目です。午前中にワークショップ、そして午後に2ステージ上演。この日もほぼ順調に本番を消化することができました。そして、ハングルを言うことに楽しみをおぼえたのか、俳優たちは個々、通訳さんに相談しながら毎ステージで自分のセリフをちょっとずつハングルに翻訳。それぞれに多少ながらも研究心がうかがえて嬉しかったです。

 この日は両ステージで客出しも実施しました。 

 海外公演は、よく、その劇団なり、作品なりのステイタスのひとつとしてよく重要視されているように思われます。わたしはかかし座でもう15年以上公演していますが、今回の経験は大変なプラスになったと思います。他の3名もまだまだ若い俳優たちですが、それぞれにもその反響はありますね。できることであれば、もっともっと海外公演のチャンスを増やし、もっとたくさんの国々の子どもたちにわたしたちの舞台を見せてあげたいものだと思いました。