『子ども舞台芸術ガイド2003』に掲載されているコラム
本誌13ページより
「稽古場で成長する子ども」
「市民影絵劇団みく、旗揚げ公演のための劇団員募集」。
2001年3月、鳥取県倉吉市でこんなちらしが配られた。
あつまったのは中高生から50代までの幅広い年齢層の参加者たちである。
その指導にあたった後藤さんは企画の段階で念を押した。
「とにかく大変です。本当にやりますか?」。
人口5万人弱の倉吉市ははるか昔に天女が舞い降りた町として知られる。
これまでも天女に関連したイベントを成功させてきた地元の青年会議所は、公共のホールが建てられたのを機に、地元発信型の劇団を考え倉吉おやこ劇場に相談を持ちかける。行政のバックアップもあり、その結果が「劇団みく」になった。
とはいえ、十数人の劇団員たちは最初は何をしてよいかわからない。
まず、かかし座の作品をビデオで見て、影絵の操作をするだけだと思っていた参加者は驚いた。
影絵の演じ手が同時に舞台俳優としても演技をするのが、後藤さんの手法。最初、ある中学生の参加者は「影絵の操作は面白いけれど人前での演技は恥ずかしい」と言いながらうつむいて台詞をしゃべっていた。
しかし、手探りで進んでいった4ヵ月の稽古でこの女の子が変わってゆく。
劇団みく代表の山崎達哉さんは言う。
「本番が近づくにつれ、お客さんを想定した目の位置、つまり客席全体を見わたせるようになったんです」。
できあがった作品は、地元で活動する太鼓、バレエ、雅楽の団体も加わりスケールの大きなものになり、観客も驚いた。「この公演の成功は地元で“9月9日の奇跡”とよばれているみたいですよ」と後藤さんはいう。
翌年3月に行われた再演は地元のメンバーだけで成功させた。
倉吉青年会議所や倉吉おやこ劇場など地域の人々が中心となり劇団運営に協力する。
同時に、劇団の成長に合わせて、地域のネットワークも育っていく。
この流れの中で、劇団員たちは自身を深めつつある。
「街の発展は、その街に住み、その街をかけがいのないものと感じてる人たちによってしか成し遂げられない」という後藤さんの持論が、倉吉の人たちの思いとぴったり重なっている。
次の目標は、02年10月に鳥取で行われる国民文化祭公演。
最初はとまどっていた中学生も、今では劇団の中心メンバーのひとりだ。
下記のサイトでこの出版物に関する詳しい説明がされています。
興味をお持ちの方はそちらへどうぞ。
▼
(社)日本芸能実演家団体協議会のホームページ(発行元)
http://www.geidankyo.or.jp
▼
『子ども舞台芸術ガイド2003』(上記サイトのページ内)
http://www.geidankyo.or.jp/05jyo/kikan5/7_top_msg.shtml
前のページへ戻る