明日へのビジョン25
横浜ものの影絵劇も

(有)かかし座社長 後藤 圭氏

  「YOKOHAMA商工月報」
No.518
1993年5月1日発行
発行所:横浜商工会議所

ーどんな仕事をしている会社ですか?

後藤 影絵の製作がベースです。いろいろな素材の紙を切り込んで影絵をつくります。その影絵を使って芝居をやったり、ビデオや映画のフィルムを作ったり、出版したりしています。割合いは芝居部門が90%を占め断然多く、団員25人でやっています。

ー最近のヒット商品は?

後藤 芝居では「木彫りのオオカミ」です。ビデオではTBSから全国ネットで放映した「影絵グリム童話」で、52本製作しました。

ー会社の歴史を話してください。

後藤 影絵作者であった父・後藤泰隆(ごとうたいりゅう)が昭和27年に日本初の影絵劇団かかし座を東京で創設しました。父は藤城清治さんと共に影絵作者の草分け的存在でした。父が劇団をつくったあと影絵劇団は7つ8つ生まれたようです。父は15、6人のスタッフと共に「機関車やえもん」などのヒット作を生み出しましたが昭和54年、志半ばで急逝し、母(五十子さん)が後を継ぎました。
 当時私は東京音楽大学の学生でしたが、54年にかかし座に入り、56年に父の事業を代表として正式に引き継ぐことになりました。59年8月には専用の稽古場がほしくて、東京渋谷から現在の港北区新吉田町に引っ越してきました。

ー従業員と年商は?

後藤 社員25人は全員かかし座の団員です。北は北海道から南は沖縄まで年間約500ステージを全員でこなしています。団員は3班に分かれ公演旅行を行っており、団員一人の年間平均ステージ数150回に及びます。私自身も年平均50日程度は公演の準備などに飛び回っている身です。年商は昨年の業績で約1億6千万円でした。

ー影絵劇の魅力は?

後藤 影絵の世界は、人々の心を夢幻・無限の想像へかりたてる不思議な性質と魅力を秘めています。この性質と魅力で、たくさんの人々の心に夢を育てようというのがかかし座の影絵です。そしてただの影絵ではなく、一人一人の劇団員が元気にイキイキと演じることにより、見る人たちもその元気を感じて楽しくイキイキしてくる。そんなステージを目指して団員が一丸となれるのも喜びです。

ー新時代への影絵を標榜されているようですが、今後の劇団の抱負は?

後藤 ミュージカルなどに比べて、影絵劇は演劇としてまだまだ認知されていません。影絵劇を世間一般はまだ子供用の劇としてみています。
これは誤った認識で、影絵劇は中学生以上、もちろん大人の鑑賞に十分耐え得る演劇です。今後映像の分野でもいい仕事をして、外国へ持って行けるような作品をつくろうと思っています。また横浜に題材をとった作品もつくって、地元横浜市民に劇団を知ってもらうよう努力します。そして、市内での公演の比重をもっと増やしたいと思っています。
(フリーライター 生出恵哉)