人物風土記~影絵を継ぎ、夢を追う~
(「タウンニュース:都筑区版」No.360 2006年2月10日)


 

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◯…「スクリーンの向こうから透けてくる美しさ。影の中に、
想像を膨らませていく美しさ」。南山田町に社屋、スタジオを構える影絵劇団『かかし座』の代表は、影絵の魅力をそんなふうに語る。1952年、父親が創立した『かかし座』。
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自宅と稽古場が一緒の環境で育ち、影絵はいつも身近にあった。「変わった家だなあと思っていた。放送局に連れて行ってもらったり、子役で出たりと面白がっていましたけど」。音楽の道へ進もうと大学に進学していた矢先、父親が急逝。会社を存続させようと跡を継いだ。取り組んだのは、作品の質の確保。さらに『影絵というと、それのみを見せるところが多かった』なかで、役者の芝居も取り入れた新たな表現手法を確立していく。
◯…今年で9回目を迎えた『横浜アートLIVE』(3月1日から開催)には立ち上げ当時から携わる。「横浜にも演劇に対する需要がいっぱいあるということを証明するため」。横浜における “演劇活動の難しさ“は、骨身に染みている。「横浜には標準的な舞台機構を備えたホール施設が、正確に言えば、ひとつもない」。≪芸術・文化創造都市≫を掲げる市に対し、その言葉は厳しい。長年にわたり、横浜の舞台芸術の発展を追い続けてきたゆえ。それでも「(市内の)劇団の交流が促進されたという手ごたえはある」とアートLIVEの”収穫“にも目を向ける。
◯…影絵は子どもの観るもの。そんなイメージを払拭したいという思いもある。ひとえにそれは「意識の問題だ」という。観客の意識。あるいは劇団員の意識。「幼少からお年寄りまでが楽しめる、影絵のお芝居を作っていきたい」。そして、いつかは、自分たちのホールで。それが夢のひとつだ。