「アシテジ」No.114
2011年7月
編集・発行:アシテジ日本センター

Hand Shadows ANIMARE ヨーロッパツアー

劇団かかし座  後藤 圭




私たち劇団かかし座の手影絵作 品「Hand Shadows ANIMARE」は、この5~6月にヨーロッパの三つのフェスティバルから招聘を受け、4ヶ国10ステージの公演を無事に終えてまいりました。
参加したのはスペイン・セゴヴィアのTitirimundiフェスティバル、フィンランド・コウヴォラのKUULASフェスティバル、そしてチェコ・リベレッツのMate?inkaフェスティバルの三つです。Titirimundiはサテライト会場が各地にあり、ポルトガルの公演も含んでいたので全部で4ヶ国での公演になりました。
この作品は、一昨年のドイツ公演、昨年のオランダ・ドイツ公演に続く3年連続3度目のヨーロッパツアーになります。しかし一昨年、昨年は日程的にもさほどではありませんでした。今回はヨーロッパと日本を2往復しながら25日間のかなり大きなツアーになります。少し不安もありましたが、お声をかけていただいた以上は出来るだけ期待に応えたいと考え、実行する事にしました。

Titirimundi(ティティリムンディ)フェスティバル/スペイン・セゴヴィア
このフェスティバルは人形劇の大きなフェスティバル。今年で25回目の開催を数え、5日間、16ヶ国40劇団が集い、セゴヴィアでは100を越えるステージが行われています。
会場もホール、パティオ(建物の中庭)、路上、と多様です。路上の公演など、天気が良くて暑いのに開演の1時間も前から人が集まり、開演の頃には何百人もの市民が人形劇の舞台を取り囲みます。さらにサテライト会場がスペイン全土からポルトガルまで沢山有り、いくつかの劇団はその会場を回るスペイン国内ツアーに参加します。
私たちは5月5日に成田を発ち、同日セゴヴィアに入ってからの14日間スペイン6都市+ポルトガル1都市を廻り、最後はフェスティバルのメイン会場での公演(5月15日)です。
スペインは大きなホールも小規模なホールも、馬蹄型の伝統的なスタイルの劇場が多く、私たちも大変楽しみました。フェスティバルのメイン会場での公演は美しい会場に満席のお客様の大きな拍手をいただき、とてもエキサイティングな時間を得ることが出来ました。

KUULAS(クーラス)フェスティバル/フィンランド・コウヴォラ
南のスペインから移動したのは北方のフィンランドです。このフェスティバルはアマチュアも含めた児童劇のフェスで24回目の開催。小さなフェスで開催日も4日間ですが、5ヶ国14劇団が集い、オープニングには大統領も出席され、とてもしっかりした運営がされているようでした。私たちはフィンランド大統領のメッセージを直接頂いただき、こちらからも招聘のお礼を申し上げる事が出来ました(緊張した!)。メイン会場の前には参加5ヶ国の国旗がポールに揚がっています。その中には〈日の丸〉も掲揚されているではありませんか!見知らぬ国へ行って私たちのために掲揚された国旗を仰ぐ気持ちはなかなか味わえるものではありません。ここでは5月22日に公演を行いました。

Mate?inka(マテジンカ)フェスティバル/チェコ・リベレッツ
ここは一度帰国し、改めて出かけました。このフェスティバルは「就学前の児童のための人形劇フェス」という対象年齢に対して明確な位置づけのあるフェスティバルです。今回は21回目の開催。5ヶ国19劇団が集い、期間は6月14日から5日間でした。
このフェスティバルはNaivni Divadlo Liberecという人形劇団の代表、S.Doubravaが総てのディレクションをしています。そしてその劇団の本拠地の建物(その中に大小3つの会場)がメイン会場になっています。でもだからと言って決してプライベートなものではなく、レセプションセレモニーは市庁舎の中で市長が出席して行われ、街のあちこちにこのフェスのマスコットであるゾウくんのバルーンが設置されていて、この地域でとても大切にされている事がわかります。
私たちの「ANIMARE」という作品はこのフェスの対象年齢より上野年齢層を意識して作った作品なので戸惑いもありました。しかしこのフェスのファイナル・ステージとしての公演で、とても期待されている事がわかります。
結果は大成功したと言えると思います。出演者達はなんどもステージに呼び戻され、アンコールが終わり、スタッフタイトルがスクリーン上をスクロールしはじめてもまだ拍手は止まず、出演者達は重ねてステージに呼び戻されました。

私たちは3ヶ所のフェスティバルを堪能するとともに素晴らしい体験をすることができました。
世界は広いですね。まだまだ私たちに出来る事はありそうです。