ART STAGE SAN招聘による韓国公演とW.S.

劇団かかし座代表 後藤圭

アシテジ日本センター「アシテジ」No.128掲載 2015年1月発行



私たち劇団かかし座は、昨年10月6日から19日までの2週間、韓国に公演とワークショップのために行ってまいりました。今回の招聘元は「ダルレの話」で日本でもおなじみのART STAGE SANです。私たちは2012年と13年にブラジルのSESI BONECOS DO MUNDOという各都市巡回型のフェスティバルに招聘を受け、合わせて約5週間ブラジルの各都市で「Hand Shadows ANIMARE」の公演をしてまいりました。そのフェスティバルにART STAGE SANも招聘を受けていて、一緒にブラジルを旅する機会があったのです。そこでお互いに作品を見合い交流する機会を得、それがご縁になって今回、韓国での公演とワークショップのために招聘を受けることになったのです。
今回のSANの招聘の目的は実はあくまでもワークショップ。でもそのためだけのために訪韓することはお互いにとって負担が大きいので、公演もSANが用意してくれました。スケジュールはイジョンブとガチェンでの各2日4st.の「ANIMARE」公演と、その公演に挟まれた5日間のワークショップでした。

イジョンブ公演
イジョンブはソウルの北隣の町です。韓国到着翌日に仕込み、翌々日から公演です。会場は「イジョンブ アーツ センター」国立の立派なホールです。しかも大ホール!事前の連絡では小ホールのはずだったのに!「ANIMARE」は大ホールでやって欲しくない!なんて言っている暇もなく仕込み開始!オペラやバレエが出来る大ホールで我々の小さな「ANIMARE」を仕込むことになったのです。驚いたのはホールの外壁面に他の催しと並んで巨大な「ANIMARE」のタペストリーがかかっていたり、「ANIMARE」のラッピングカー(1t.の商用車ではあるが)が街の中を走っていたりと、日本とはかなり違うプロモーションの様子です。1日目の午前は幼稚園保育園などの団体鑑賞、そして2日目にかけての残り3st.が一般の公演でした。大ホールで満席に近い観客で幼児も多数来場という状態でハラハラしましたがなんとか無事に終了!喜んでいただけたようでした。韓国語の台詞も良く通じていたようで、勉強した甲斐がありました。

ワークショップ
今回の韓国ツアーの主目的は最初に触れたようにワークショップ!実はSANの2013年11月の日本公演の後に、彼らがかかし座の稽古場に来て、二日間影絵と人形のワークショップをお互いに体験しあっているのです。それを一歩進めてSANの稽古場で影絵劇を作る体験をしたいというのが今回のミッションでした。はじめは影絵や手影絵の技術に興味があるのかと思ったら、そうではなくてかかし座が実際に作品を作るプロセスを体験し、その中でインスピレーションを得たいとの事。これは結構難題です。
影絵劇というのは通常の舞台に比べてプロセスが多く、影絵美術、映像投影、操演など専門性がかなり高いのです。どうしようかと迷いました。そしてかかし座の舞台作品の仕込みそのままというわけにはいきませんが、SANの劇団員とかかし座のANIMAREメンバーで混成チームを二つ作り、稽古場で小さなストーリーを創作して内輪の発表会まで持っていくことを試みました。最初は言葉も充分には通じませんしぎこちない中で始まりましたが、通訳の方の奮闘もあり、方向性が出てからは皆かなり積極的になり、お互いに相手の言葉を少々覚えたりして進んでいきました。SANの皆さんもさすがにベースは人形劇団です。物を作るにしてもそれを使うにしてもすぐに要領を掴んでしまいます。影絵劇特有の光と物の位置・角度と映し出される影の関係についても段々に理解が深まっていきます。5日目は日韓混成2チームによる内輪の発表会です。お互いに負けまいと練習にも熱が入りましたが、結果は上々!小さな小さなまだ作品と呼べないようなものですが、SANの稽古場で合同作品が生まれた瞬間でした。

その後、ガチェン公演
今回のツアーではSANの皆様、通訳・マネージメントのBo-kyungさん達に本当にお世話になりました。ワークショップの後、ソウルの北方の山間地にあるリゾートに連れて行ってもらったり、ツアー最後のガチェン公演(今度は適当なサイズのホールでした)も無事に終了し韓国での2週間のスケジュールを無事に終えたのでした。