後藤 圭
私は劇団かかし座という影絵の専門劇団を運営し、「影絵」の企画、製作、公演に携わって来ました。しかしその「影絵」は先代から引き継いだ「かかし座の影絵」であり、他の影絵表現に関してはさほどの興味を持っていませんでした。ところが十数年前にきっかけがあり、影絵資料の収集を始めたのです。その時の資料の中に「影絵之研究」北尾春道・著がありました。 著者の影絵に対する考え方の一端をご紹介しましょう。 この本の第一章は「1影絵の意義」「2影絵の芸術価値」で始まりますが、影絵というものがいかに古くから世界中の芸術発展の底流に流れていて、今後ますます可能性がある、ということについて論じられています。そして第二章は歴史的考察に入ります。実に広範囲の世界各地の影絵の特徴を論じながら、以下の論を示します。 「~この影絵芝居の人形劇は普通演劇よりも先立って創世されたもので、影絵によって芽生えた影絵劇が、人形自身の動作を表現させる扁平木偶人形となりて、それが~円形人形となり、ついに優人舞台劇を作るようになったのであると思われる。即ち影絵は演劇起源の一要素というべき~。」 これをどのように受け取るのかは読者の自由でありますが、私はこれを影絵を研究している後世代の人間として、北尾氏からの大きな応援、励ましとして捉えていきたいと考えています。 |